またひとつ地域の「良い店」がなくなる。
歩いて20分くらいのところに川魚料理の店がある。
初めて訪れたのは30年近くも前のこと。
家に来てくれた母を案内した。
聞いていた評判から、母が気に入るかもしれない、と期待した。
その通り、こじんまりした静かな店内でいただく鰻の蒲焼や川魚のアライを母はたいそう喜んだ。
母が「おいしい!」と感じ食が進む料理は少ない。
蒲焼は、美しい焼き色から香ばしさが立ちのぼり、口に含むとみじんも泥臭さがない。
鮒や鯉のアライはしっかり氷でしめてあるが、雑味や水っぽさがない。
添えてあるまったりとした酢味噌の酸味、甘み加減も文句なし。
それでいて価格は随分抑えてある。
このあと母は、お友だちを誘い訪れたよう。
母にとってこの店と味は、電車を乗り継ぎ2時間以上もかけて来る値打ちがあった。
もちろん私の家に来てくれた時の楽しみのひとつにもなっていた。
いつもおいしそうに食べ、必ずお店の人に心づけを渡していた。
4年前に母が亡くなってからも、年に1,2回は訪れた大切な店だったのに、閉店が決まってしまった。
不況の波にあおられたのか、店主(料理人)の高齢化の為か・・・?
地域でひとつひとつ消えていくのは、心寄せた店。
新しくできるのはたいてい、便利だけど(24時間営業、早い、安いといった)心を寄せることなどなさそうな店。
寂しい・・・。
「20日で閉店」を知ったのが遅かったので、食事に行く時間が取れそうもなく蒲焼の持ち帰りを頼んだ。当日に1本いただき、2本は冷凍して日をおいて惜しみつついただく。
店を出るとき、いつも通り店主自ら「ありがとうございました」と挨拶された。
私の方も、母のことも含めて心から「ありがとうございました」を返した。
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もしそうであれば観賞者たちには裏切られた思いがあったかもしれない。
*本文より少し抜粋*


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