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2007年5月 9日 (水)

『Vas, vis et deviens』(約束の旅路)

先日、久しぶりに観た映画は『約束の旅路』2005年フランス ラデュ・ミヘイレアニュ監督。

*あらすじ(チラシより)*
家族を失い、母と2人、歩いてスーダンの難民キャンプにたどりついた9歳のエチオピア人少年。母は少年に命じた。生きのびるために、ユダヤ人と偽って、ひとりイスラエルへ脱出するようにと。母と別れ、故郷から遠く離れて、真実の名前を隠して生きる新しい地。そこで少年は愛情ゆたかな養父母に出会うが、別れた母とアフリカの大地への思いはおさえがたく、肌の色や宗教による壁、そしてユダヤ人だと偽りつづけることに激しく葛藤する。やがて彼は成長し恋も知るが、故郷アフリカの窮状を知り、医師を志してパリへ向かう・・・。
Photo_1

歴史や地理(他のことも)に詳しくない私にとって、この壮大なドラマは理解半ばでしかないとしても、知識に乏しい者の心にも十分に響いた。

女性は生命を生み出す神秘さを授かった存在であることはまちがいないけれど、同時にその命を守るための強さも授かっているのだろう。
この映画で何よりに迫ってくるのは、女の心、母の心の強さと潔さ。

その母は既に夫も他の子たちも失っていた。
もはや残った一人の子の命を守るのは、為すすべのない自分の腕でも宗教でもなく実際的な手段「ユダヤ人と偽ってイスラエルという未知の国へ脱出させる」ことのみ。

母は少年に告げる、「Vas, vis et deviens(行け、生きろ、生まれ変われ)」
(この言葉にたいそうインパクトがあるので邦題の『約束の旅路』がしっくりこない。)

幼子を亡くしたユダヤ人の母が少年を「我が子」として連れ出す。
この女性も「命を守る」強さを授けられた母、であった。

アフリカの大地でキリスト教徒して生を受けた少年は、宗教を偽り、名前も変わり、新しい環境で生きていく。

思春期を迎え、青年になってからも求めて得られない答え。
「自分は何者?なぜおかあさんは僕を行かせた?僕は何になればいい?」

黒人として受ける差別、自らのアイデンティティーにも苦しみ続ける彼を支える女たち。慈愛に満ちた養母、家族を捨て彼と生きることを選びとる白人女性。
主人公を始め魅力ある男性たちを配しながらも、圧倒的な存在感で女性が描かれている。

さらに物語にはたくさんのテーマが盛り込まれ、そのひとつひとつ重い。
映画はスーダンの難民キャンプから始まり、そこで終わる。20年ほども時は流れたろうが相変わらず難民はおりキャンプの環境は悪い。
そして宗教のこと、家族のこと、差別と偏見のこと、イスラエルとパレスチナのこと、・・・・

(「エチオピア」と聞いてイメージするもののひとつにBob Marleyがあるけれど、彼もファラーシャ(エチオピア系ユダヤ人)が集まるディスコでポスターとして登場していた。そういえば、青年期の主人公もどことなくBobを感じさせた・・・?)

エチオピアのユダヤ人をイスラエルに移送する「モーセ作戦」という史実から生まれた物語とのことだけれど、「モーセ作戦」はもとより「エチオピアのユダヤ人」も知らなかった私にも、とても見ごたえのある映画となった。
上映劇場も限られているようだけれど、機会のある方はどうぞご鑑賞を。

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コメント

相変わらず,重そうな,でも「面白い」映画をご覧になっていらっしゃいますね。少しはお仕事に余裕が出てきたということだったらいいですね。わたしもこの映画には興味があります。女の強さのようなものに今はとっても惹かれます。それにうたれても立ち上がる人間の強さ。現実にはおっしゃるとおり難民ひとつとっても,難しいことだらけ。時間が容赦なく過ぎていくばかり。自分のできることは?と考えるとたちどまってしまいますが,まずは知ることと感じることですものね。またいろいろご紹介ください。

投稿: KATEK | 2007年5月11日 (金) 08時12分

KATEKさん、こんばんは。
好きな映画も観る機会がぐっと減りましたが、それ以上に本が読めていません。時間がないというのは言い訳で、どうやらじっくり読むという根気のようなものが乏しくなっているようです。
KATEKさんの次々の読破をブログでうかがいながら、「すごいなぁ」とひたすら感心しています。

>自分のできることは?
そうですね・・・、何ができているのでしょう・・・?
自分の生も人の生も豊かであれ、と願うばかりです。

投稿: りん | 2007年5月11日 (金) 22時47分

昨日の東京新聞に<映画『約束の旅路』のブログ募金贈呈式>という記事がのっていました。ブログにこの映画のコメントを書いた人が国連難民高等弁務官事務所に一人当たり50円の寄付をするというものでした。詳しくはよくわかりませんが,「カフェグループ」というところがやっている「ブログ募金キャンペーン」だと書かれています。こういうこともできるんですね。とりあえずお知らせまで。

投稿: KATEK | 2007年5月13日 (日) 07時06分

KATEKさん、こんばんは。
「ブログ募金」のこと、ご案内いただいてありがとうございます。
実は私がこの映画を観たときは「1,600人のブログで、井戸の掘削」という目標に既に達していました。
それもあって趣旨もしっかり読まないままに素通りしていました。
(「募金」という意味合いにひっかかるところもありました)
コメントいただいたことをきっかけに参加しました。
これで良かったと思います。ありがとうございました。

投稿: りん | 2007年5月13日 (日) 22時11分

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