« さっそく柿を吊るす | トップページ | 家族、家庭 »

2007年12月 4日 (火)

『朽ちていった命-被爆治療83日間の記録-』

KATEKさんのブログでご紹介のあった『朽ちていった命-被爆治療83日間の記録-』を読んだ。
裏表紙には
【1999年9月に起きた茨城県東海村での臨界事故。核燃料の加工作業中に大量の放射線を浴びた患者を救うべく、83日間にわたる壮絶な闘いが始まった。――。「生命の設計図」である染色体が砕け散り、再生をやめ次第に朽ちていく体。前例なき治療を続ける医療スタッフの苦悩。人知及ばぬ放射線の恐ろしさを改めて問う渾身のドキュメント。】とある。
事故が起きて間もなく制作されたNHK番組のドキュメンタリー取材班が著した。

『朽ちていった命』 当時、事故報道に衝撃を受けたし、大内さんの症状に関する追報道も気にかけていた。
通常は原子炉という厚い防護壁内で起こされる臨界反応を直接受けてしまった身体に、どのような祈りも治療も届くはずはないだろうに、大内さんの症状報告は何十日間も続いた。
その日数の長さに、「生かされている」と感じ、国やJCOは「原発事故で死者」という記録を残してしまうことを何としても避けようとしているのだと考えていた。

「前例なき治療を続ける医療スタッフの苦悩」が十分伝わるこの本を読んだ今も、その考えは変わらない。
むしろ描かれている、ひとりの患者としての大石さんに接する医療現場の医師や看護士たちの真摯さや苦悩の描写が、国やJCOの思惑を覆い隠してしまっているようなはがゆさも覚える。

医療の中心を担った医師は「放射線の恐ろしさは、人知の及ぶところではなかった」と悟り「放射線や原子力と命の重さの関わりを見つめ直したい」と決意する。
それは、具体的には「人の命の尊さを原子力防災の枠組みのなかで訴え、万が一、同じようなことが起きたとき、できるだけ早く医療者として対応できるような準備をしたい」ということ。(「人知の及ばないもの」を手離していこうとするものではない・・・。)

またあとがきによると、このNHK製作番組は第42回モンテカルロ国際テレビ祭で最優秀賞をとったとのこと。その受賞の際の製作者スピーチとして、
「取材を重ねるなかで、この番組を最高のものにしたいと考えつづけました。その気持ちの源泉となったのは、極秘とされている一枚の写真でした。それは大内さんのご遺体が写っている写真でした。体の正面の皮膚がすべてなくなって真っ赤になっているにもかかわらず、背中側の半分は皮膚が残って真っ白で、はっきりと境界ができていました。これまでにまったく見たことのない遺体でした。
放射線がDNAを破壊し、体を内側から溶かしていく怖さを感じました。私は大内さんが、その怖さを多くの人に伝えてほしいと訴えているとおもいました。・・・」
とある。

確かに、画像も含めた克明な記録は放射線の恐ろしさを十分に感じさせる。
「放射線の恐ろしさは、人知の及ぶところではない」ことをはっきりと理解させる。

それなのに、それなのに、この本のどこにもそもそもの「原子力発電」に対する疑問が一言もないのは何故?
医療現場の方たちの詳細なインタビューでも、その疑問に関する発言は全くなかったのか?
読み応えのある本であったけれど、全編を通して感じるはがゆさがここにある。
原子力政策に中立の立場から製作されたものだろうけど(まず原発ありき、が既に中立ではないような気はするけれど)、原子力そのものに対する不信や疑問を取材班があえてカットしたのなら、大内さんが身を挺して伝えたはずのものの本質を奪ったような気持ちにさえさせられてしまうのだけれど・・・。

|

« さっそく柿を吊るす | トップページ | 家族、家庭 »

コメント

こんばんは。原発をなくそうということには,なっていませんでしたね。NHKだから,しかたないかと思いつつ,その点はわたしももどかしい気持ちがしました。ひとつのヒューマンドラマで終わってはなりませんよね。原発の耐震構造を強化すると今日の新聞には書かれていましたが,みるかぎり信用なりませんし,そもそも事故自体は起こって当然のものなのですから,最終的には廃炉を求めるしかないのだとわたしも思います。

投稿: KATEK | 2007年12月 5日 (水) 00時03分

こんちは。りんさん。
この本とあるサイト
[この方のブログも好いですよ]で紹介されてましたので
http://letterfromthewind3.cocolog-nifty.com/letter_from_the_wind_3/2007/09/nhk_83_efb8.html
100円コーナーで見っけた時、買っておきました。が、しかし、未読です。
でも参考サイトなら幾つか、知って読んでます。
asahi.com> マイタウン> 広島> ピース@ヒロシマ
「放影研60年 大久保理事長に聞く 2007年03月07日」
http://mytown.asahi.com/hiroshima/news.php?k_id=35000160703060002
この事故があった時、ロシア人と喋りましたが、
『でも原発は安い』と、
御気楽な発言しかせ~へんおッさんにゃった。
「ナージャ」が山のように泣いてイルのに・・ね~。
大石さんの写真(NHKでも放映された)好かったですね。
これぞ「捨て身」のジャーナリズム。
ここら辺の話では中国新聞広島局の特集が秀逸でした。
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/nuclear_age/index.html
他にも色々↓あるようですが、とても眼を通しきれません。
http://www.chugoku-np.co.jp/kikaku/index.html
ではでは。

投稿: 三介 | 2007年12月 5日 (水) 17時43分

KATEKさん、こんばんは。
1990年の暮らしに戻れば、電気の需要は原発に頼らなくても良いと聞きました。
「便利で快適」に慣れた身には少し不安はありますが、できそうな気もします。
何といっても「普通に生きて、普通に死にたい」、これが一番の願いです。

投稿: りん | 2007年12月 6日 (木) 22時31分

三介さん、こんばんは。
いろいろな情報、ありがとうございます。
番組放送の時はちっとも知りませんでした。「ニコニコ動画」で番組を見ることができるとのことでしたので、さっそく登録をしたのですが、著作権がらみで削除されたあとでした。(07年9月頃までは見ることができたようです)。

ホンマに原子力、恐ろしいです。
そのロシアの方のようには、のんびりとした気持ちになれません。

投稿: りん | 2007年12月 6日 (木) 22時40分

こんにちは。
相変わらず忙しい日々をお過ごしのようですね。それにしても美味しそうなブログです。

ところで、この本を私も一気に読ませていただきました。
以前、映画「六ヶ所村ラプソディ」を撮った鎌仲さんが書いた本、
「内部被爆の脅威」を読んで、放射線がどのように人の遺伝子まで傷つけるのかを知りました。大内さんの被爆のドキュメントは、解説で知ったことが現実に起こった恐怖をひしひしと感じさせました。

本当は何があったのか?これを知ることはとても重要ですね。

投稿: pianocraft | 2007年12月11日 (火) 22時37分

pianocraftさん、こんばんは。
今日は比較的のんびりとした一日でした。本当は「師走」だから家でもいっぱいすることがあるはずだけど、大掃除や年賀状などにはまだ気持ちが向きません・・・。
(見抜かれている通り、おいしいモノにに対してはけっこうマメなのですが)

そういえば昨年に『内部被爆の脅威』のご紹介がありましたね。読みぞこなっていましたので、さっそく今ネットから注文しました。
もっとも『朽ちていった命』も読み終えるまで幾日も費やしたので、また日にちがかかっちゃうかもしれません。
改めてご案内いただきありがとうございました。

投稿: りん | 2007年12月12日 (水) 20時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/200019/9255124

この記事へのトラックバック一覧です: 『朽ちていった命-被爆治療83日間の記録-』:

« さっそく柿を吊るす | トップページ | 家族、家庭 »