済州島四・三事件60周年“共に歩もう 平和への道”
今頃書いているけれど、19日の話。
急に誘われて仕事を終えるなり【済州島四・三事件60周年記念行事 “共に歩もう 平和への道”】の会場であるクレオ大阪に駆け付けた。開演間際で既にぎっしり満員。
席を確保してもらっていたので前から5番目中央あたりに位置取ることができた。前にも周りにも、かなりのご年配の方が目立つ。
すぐに第一部開始。お話される金石範氏と聞き手として高正子さんが登場。
厳しい表情に見えた金石範氏だけど、穏やかで温かみがありながら力強いお話しぶり。信念とお人柄、どちらもが伝わってきた。
(デビュー作『鴉の死』、代表作『火山島』(3巻までだけど)、どちらも書棚に並びながら実のところ私は読んでいない・・・。)
お話の内容は、4月17日の朝日新聞[opinion]に掲載されたもののほぼ同じ。
【新聞記事よりほんの一部抜粋】
済州島では四・三事件はタブーとして歴史の闇に葬られ、一切の記憶が抹殺されてきた。記憶のないところに人間は存在せず、歴史はない。
見てはならぬ、口を開いて話してはならぬ、耳で聞いてはならぬ。外部からの恐ろしい国家権力による記憶の他殺。権力に対する恐怖からくる島民自身による記憶の自殺。抹殺された記憶は内への深く無意識の世界に沈みこんで、やがて忘却になり、死に近い沈黙に至る。】
記事は、文学者らしい巧みな表現で綴られているが、檀上ではお話は「いきつもどりつ」もあったかな
とはいえ、生で語られる言葉を少しも聞き逃したくないし、一言一句でもたくさん聞いておきたかった。ご高齢でありながら今もお元気なことが何よりうれしい。
時間の制約があり、高正子さんがまとめを、と促されたのに対して、「いや、あんたがしゃべればいいよ。思いは同じだし、これからは若いもんがやっていかなあかんのやから」と返されたようすも自然体。
これを受けて
「私たち2世はこの四・三事件にどう向き合えばいいのか?
命からがら日本に戻ってきて、『語れないこと、忘れたこと、なかったこと』にしている人たちが少しでも語られるよう、話を聞くということをやっていき、心を解放して人間らしく共に生きていいきたい」
と、高正子さんは結ばれた。
この方は、済州島を故郷にもつ生野生まれの方。民族文化としての言語や芸能を教えておられるとのこと。
続く第二部は「民俗クッ」
パンフレットには下記のような紹介文がある。
【「クッ」とは、韓国のシャーマン(シンバン)による巫俗儀礼のこと。本作品は済州島の方言による演劇、歌、演奏、と本来は宗教的な儀礼であるクッが結びつき、芸術公演であると同時に慰霊の儀式である。このような公演形式を「民俗劇」ではなく、あえて「民俗クッ」と呼ぶことにした。この民俗クッによって、四・三でひと言も発せず死んでいったすべての死者を慰め、今を生きる私たちの胸に積もったしこりも解くことができれば幸いである。】
在日シンガーの李政美さんの歌、崔相敦さんによる詩の朗読などに続いて、死者の魂を慰霊するクッ。
実にこれは圧巻だった。
巫俗儀礼を演じるのは劇団員であり、場所は舞台上。
それでいて、歌や演奏、踊りを通して醸し出されるものが会場を包み込み「舞台」を感じさせない。
第一部では実は眠られていたお年寄りたちもおられたが、今やしっかり前方を向き、そればかりか何人もの方が席を立たれ前と進まれる。
舞台へ続く短い階段の上り下りさえご不自由なご高齢の方がほとんどなのに、次々と舞台に置かれた祭壇に祈りをささげ、お金を供えられるだ。
演じる者も、席にいる者も、心から死者の魂を慰霊する時空が続く。
儀礼の歌の字幕がスクリーンによって日本語で紹介されているので、流れがある程度理解できる。(でも、理解しぞこないの可能性もある)
死者の為に極楽の門が開かれるよう祈りの歌は続き、開かれたところで、シャーマンたちは舞台から降りて客席通路へ。
そこには幅1メートル、長さ10数メートルほどの白布が4人の持ち手によって捧げ持たれている。
何と、先頭のシャーマンが1歩を踏み出すと、布は中央から二つに裂けていく。
まるでモーゼが割れた海中を進むときのよう。
厳かで悲しみをたたえる儀礼から、やがて「神遊ばせ」の歌へ。
シャーマンたち(といっても演技者なのだけど・・・)は一転、表情に笑みをたたえ陽気に奏で歌い踊る。会場の人たちにも誘いをかけ、それに応えたたくさんの方々が舞台上に上がり共に音楽に合わせて踊る。
「生きて踊る喜び」、これもまた死者への深い弔いが込められたもの。
金石範氏のお話が聴けたことはとっても良かったけど、さらにこの巫俗儀礼にはすっかり魅せられた。
「おもしろい」と表現しては不適切かもしれないけれど、実に韓国朝鮮文化がおもしろく豊かなものに感じられた済州島四・三事件60周年祈念の集いであった。
近いうちにぜひ済州島を訪れたい!(でも、無理かなぁ・・・)
尚、当日いただいたビラの中に「4.3事件」関連テレビ番組の案内があったので書きとめておきます。
NHK ETV特集
「悲劇の島チェジュ(済州)」
~「4.3事件」60年目の真相究明~
放送 4月27日(日)22:00~23:29
出演 金石範(作家)、李鳳宇(映画プロデューサー)
語り 広瀬修子
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コメント
りんさん。こんにちは。
4・3事件の会に行かれたのですね。私もあることは知ってましたが行ってはいません。この時期になると、生野区などで済州の事件に関するイベントが沢山もたれます。関西には、済州島出身者が多いですから。
この事件に思うのは、今もなお世界には権力による弾圧は続けられているということ。日本もやわらかい思想弾圧のような雰囲気がかもしだされています。
投稿: pianocraft | 2008年4月21日 (月) 18時43分
pianocraftさん、こんばんは。
またもやキョロキョロとpianocraftさんを会場で探していました。(笑)
パンソリも惹かれましたが、巫俗儀礼はとても興味深かったです。
最後に幾人もの人が舞台上に上がり共に踊りだしたときには、思わず私も・・・と席を立ちそうになりました。
参加したい集会やイベントが東京だけ、といいうことはよくあります。
おっしゃるように、今回の60周年記念(祈念)行事は、大阪での開催は欠かせないものでしたね。
金石範さんも言われていましたが、現大統領になって風向きが変わってきたようです。盧前大統領は国の過ちを認められ謝罪もされていましたのに・・・。
投稿: りん | 2008年4月22日 (火) 22時09分
ふたたび・・・失礼。
りんさんと共通する関心事が多く、なのに私は情報を流すだけのことが多いのです・・(反省しきり)。でもどこかでまた、お会いできるかと思います。今日、七芸のHPを見ていたら「靖国」の前売り券が売れているみたいで、
>現在、販売中の前売券(1,300円)はお席確保をお約束するチケットではございません
と断りがありました。こりゃ、ヒット間違いなしですね。でも、小さい七芸が満席で大変かも。
投稿: pianocraft | 2008年4月22日 (火) 22時42分
pianocraftさん、こんばんは。
情報、とってもありがたいです!自分だけ行っちゃって申し訳ない気持ちもちょこっと・・・。
『靖国』はたくさん入りそうですねぇ。『蟻の兵隊』のときも整理番号順にずら~りと階段で並んでいました。もちろん遅く来た人は入ることができなかったです。(奥村さんと監督のお話があった初日)そんな感じでしょうか。(階段はエアコンがきかないので暑いです!)
(
回数を増やしてもらって、)何とかもぐりこみたいいとは思っているのですが。
投稿: りん | 2008年4月23日 (水) 21時04分
りんさん、こんにちは。
今頃のコメント、遅くなってしまい申し訳ありません。
4.3事件のことはわたしも断片的に聞いてはいましたが、全体像はよくわかっていませんでした。韓国/朝鮮人のアイデンティティにもかかわる微妙な問題であるだけに、取扱いが難しいですね。明日4/27のテレビはぜひ見ようと思います。
また、韓国の巫俗儀礼のお話し、興味深く読ませていただきました。
韓国の「クッ」については、以前に『巫と芸能のアジア』野村信一著、中公新書 1995年という本で読んで大変興味を惹かれました。同書では「西便制」についても触れられており、なかなか面白かったですよ。
わたしもぜひ一度、済州島に行ってみたいです。韓国からの留学生は、韓国における済州島の位置づけは日本のおける沖縄のそれとよく似ていると言っていました。やはり、一度行かねば!
投稿: koji | 2008年4月26日 (土) 21時51分
Kojiさん、こんばんは。
このところ、仕事関係で全く余裕のない日々を送っています。
ブログも更新できないし、皆様とコメントを通じて交流できないのでさみしい・・・。
でも訪問はさせて頂いています!
kojiさんとこで、ご紹介のあった、『ペルセポリス』もちゃっかりと購入しちゃいました。
イランのことはほとんど知らないし(幾本かの映画で観たイメージしかありません)。
この本、とても楽しみです。
『巫と芸能のアジア』も読んでみたいです。
昨夜のETV特集も興味深く見ましたが、「クッ」の映像が導入のちょっとだけ、だったのがとても残念!
もっともっと知りたいです。
投稿: りん | 2008年4月28日 (月) 19時50分