「六一〇ハップ(ムトウハップ)を残してほしい
「硫化水素ガス」を発生させた自殺が急増したあおりで、材料となった「六一〇ハップ(ムトウハップ)」が製造中止になった。
在庫がなくなると、もう全く手に入らないよう。
困る人はいっぱいいると思うけれど、適切な代替品はあるのだろうか?
製造会社、武藤鉦製薬(愛知県名古屋市)とその従業員の打撃と困惑は想像するに余りあるが、利用者(消費者)にとっても、とっても困ったこと。
20数年も前になるけれど、私もこの薬品のお世話になった。
児童福祉施設職員に勤め始めていた夫は、子ども集団で発生しやすい病気にしばしば罹っていた。
そして必ず私もその病気をもらう。
身体のあちこちに痒みをともなう赤い発疹が増え始め、皮膚科を受診すると「疥癬(かいせん)」という診断。
実家の父や母が「戦後やあるまいし、何で今頃疥癬?」と驚いていた。
もちろん治療に有効な六一〇ハップのことも知っていた。
1927年生まれのこの入浴剤は衛生状態が悪かった時期は大活躍だったらしい。
やはり医師が勧めたのは「六一〇ハップ(ムトウハップ)風呂」
お風呂のないところに住んでいたので、知人から大きなバスタブを譲り受けた。
狭い和室の畳の上にビニールシートを敷き、バスタブを置く。
そこに湯沸かし器から湯を張り、六一〇ハップを注ぐ。
部屋中に硫黄の臭いが立ち込める中でしばし湯船に身体を浸す。
バケツで湯を運び、終わればまたバケツで組み上げ流し台へ流す作業も面倒なものなのだけど、それさえ笑ってしまえるくらい若い日の「おままごと」みたいな入浴は楽しかった。
おまけに効果は確実で、続ける内に皮膚もきれいになっていき副作用もまったくなかった。
疥癬は今でも発生しているようだけど、再び罹ったらどうしよう?
効果的な塗り薬があったとしても、何日も塗り続けることは副作用が心配だし・・・。
私は疥癬治療でお世話になってありがたみを実感したが、さまざまな皮膚のトラブル(あせもや肌荒れなども)に効果が有り、一度使った人は手放せないという話も聞いた。
販売中止になった経過としては、日本チェーンドラッグストア協会による加盟店への販売自粛要請から始まり、それが解除されてからも、8割の薬局が取り扱わず売上低迷ということらしい。
既に武藤鉦製薬では十数人いた工場の従業員のうち、すでに半数以上が退職したとのこと。
今頃になって愛用者から「やめないでほしい」とのメッセージがたくさん寄せられている。
かくいう私も今頃「やめないでほしい」と切に望んでいる。
自殺に使われたということで「六一〇ハップ」は一躍ワルモノになってしまいマスメディアからの情報も偏っていたように思う。
自殺の原因は「六一〇ハップ」ではないし、「楽に死ねる」というのも偽りだと聞く。
一時的な販売自粛は仕方ないとしても、そのまま製造中止に追い込まれていたなんて・・・。
(私も含めて)この入浴剤の良質さを知る者たちは、「騒ぎが収まればまた買える」と楽観視し過ぎていたよう。
「惜しい、惜しい、なくなるにはあまりに惜しい」
私も遅ればせながら武藤鉦製薬に「やめないでほしい」メッセージを送ろうと思うけど、マスメディアも、世間の流れをぐっと変え武藤鉦製薬をも再生させるような企画を考えてくれないだろうか?
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