『母なる証明』
昨日、ポン・ジュノ監督 『母なる証明』を観た。
それほど多くない入場者のほとんどが女性(私も含めて中高年ばかり)。
これは女性割引のあるレディスデーだからというだけではなく、「殺人事件の容疑者として逮捕された息子(演じるのはウォンビン)を助けるために、母親が懸命に努力する」というあらすじが女性の気持ちに響くためか・・・?
もしそうであれば観賞者たちには裏切られた思いがあったかもしれない。
あらすじからイメージされるような「落涙をこらえ切れない感動作」ではなく、ミステリ仕立てで人の心のひだ深く分け入り暗く重い部分を描き出す作品だった。
冒頭、枯れた草原に一人きりでいるいわゆる「おばさん」風の中年女性(「韓国の母」といわれる大女優キム・ヘジャ)。
彼女が(カメラに目を据え)音楽に合わせ踊り出す。
「なに??? 何が始まる?」
と狐につままれたような感覚が消えない内に、続いて(気弱な私には)正視しづらい映像。
屋内で裁断機を使い乾燥薬草を切り続けている先の女性、道路をはさんだ向かい側を気にして、視線の先は常にそこにある。
「ガシャ」という刃が薬草を切り落とす乾いた音、おろそかになっている手元、少しずつ短くなっていく薬草に彼女は二度三度と刃を下ろしていく・・・。
緊迫した場面でも想像上の怪物がベースなので言わば気楽に観ることのできた前作『グエムル-漢江の怪物』(これでこの監督のファンになった)とは、のっけから趣きが違う。
「母の愛」をテーマにしながら、善男善女は描かれないし美男美女も登場しない。(ウォンビンは美形だけど「かっこいい」役ではない)描写はリアリズム。
殺される女子高校生。逮捕される知恵遅れで記憶にも障がいがある青年。息子の為なら常軌を逸する行動も厭わない母。
そこにからむすべての登場人物は、「端役」など誰もいないと感じられるほど、物語において重要な個性を放ち、またそれにふさわしい者が演じる。
冒頭の枯野を始め、画像に上げた村の墓地など、風景も印象に残る。
サスペンスでありストーリーを書くことははばかれるが、後半の展開は意表をつかれるし、それが冒頭の「なに???」のシーンにもつながっていく・・・。
この作品のもつ凄みは、むしろ女性より男性が引き込まれるのかもしれない。
とはいえ、私はもう今からポン・ジュノ監督の次の作品を楽しみに待っている。
*公式サイトはこちら
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