« 寄せ植え講習会 | トップページ | ご老人は雨に打たれながら »

2009年12月10日 (木)

『46年目の光』

『46年目の光』(ロバート・カーソン著)は、3歳のときに失明し46年後に手術により視力を取り戻したアメリカ在住、マイク・メイのことを記したノンフィクション。
序盤から中盤までは、視力はなくともずば抜けた頭脳と身体能力、そして冒険心によって豊かに生きる姿が描かれる。

46年目の光 本の帯には本文から抜粋された1文が記されている。
「自転車に乗るってどういう感じなんだろうと想像しながらなにもせず一生を送るなんて、パパはいやだったんだ。そんなのは自転車で壁に激突するよりいやだ。そう思わないか?」

まさしくマイク・メイの生き方はこの通りであり、彼の母親も同じ考え。
一方、私は小心でかなり臆病。壁に激突する可能性があるなら自転車に乗ることはあきらめるし、子どもにも「あきらめなさい」と説得する。

この性質の違いや彼の能力の高さから、さして感情移入はなかったものの、物語りはおもしろく断続的に読み進めていた。
ところが中盤過ぎくらいから俄然興味が増し、本が手離せなくなった。

視力を回復させる方法があることを知ったメイは、半端ではないリスクを理解しながら手術に挑戦する。
結果、視力は回復したものの、目に映る「モノ」の把握が完全にできない。
たとえば「見た」だけでは男か女かの区別もつかないし、息子2人さえ見分けられない。
そこから明らかにされていくのは、モノを見るプロセスで脳が果たしているとても重要な役割。
科学がとっても弱い私にもわかるように、解き明かされていく。

たとえば人間の顔の見分けも、ごく幼い時期に始まる徹底した訓練と学習の積み重ねがあればこそ可能になるらしい。
違う顔をしているはずの羊たちも普通の人にはみな同じに見えるけど、羊飼いたちは「訓練と学習」のおかげで1頭1頭の羊を見分けられる、それと同じ。

何でも口で確かめようとすることから始まる赤ちゃんの「研究活動」はとても大切と、保育士をしていた若い頃から知っていたつもりだけど、「あぁ、本当に乳幼児期は大切なんだ」とこの著書のおかげで今更ながらストンと腑に落ちた。
視力が正常であっても、乳幼児期の体験が豊かでなければ「見る」ことは満たされない、ということなのだろう。

400ページを超える長編ながら読みやすく、しかも読み応えがある。
みなさま、お正月休みでもいかがでしょうか?
年末に帰ってくる0歳児子育て中の末っ子には、「ぜひに」と勧めるつもり。

|

« 寄せ植え講習会 | トップページ | ご老人は雨に打たれながら »

コメント

 人間は、“脳” で世界を見ているのだとか。先日、視覚と脳に関する下記の2冊の興味深い本を読む機会がありました。一部に脳科学の専門的な記述もありますが、私のような科学音痴でも充分に楽しめる本でした。もし興味がおありでしたら・・・。

「見る」 とはどういうことか―脳と心の関係をさぐる (DOJIN選書7) 藤田一郎=著、化学同人

脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書) V.S.ラマチャンドラン=著、山下篤子=訳 角川書店

投稿: ともしび洞 | 2009年12月11日 (金) 23時46分

ともしび洞さん、こんばんは。
本のご紹介、ありがとうございます。
さっそく『脳のなかの幽霊』を手配しました。(こっちの方が難易度が低そうでした)。
そういえば、ともしび洞さんは読書家と思われますのに、ブログの方では書籍のご紹介、余り無いようですね。
私が見落としているだけかな?

投稿: りん | 2009年12月12日 (土) 22時04分

 お知らせした本に興味を持って頂けたようで、ご紹介した甲斐がありました。^^

 お察しのとおり 『脳のなかの幽霊』 の方が難易度が低いと言えるかも知れません。同書は、著者のラマチャンドラン博士が実際に担当された患者さんの具体的な症例が多数紹介されていますので、専門知識がなくても興味深く読み進めることが出来ると思います。実際、私も、久しぶりにページを捲るのがもどかしいような思いをしながら読みました。

 『 「見る」 とはどういうことか―脳と心の関係をさぐる』 の方は、タイトルのとおり、視覚というもののメカニズムの解説にウエイトが置かれています。その分、前書よりは若干専門的な記述が多かったように思います。ですが、視覚のメカニズムの精密さや、「現代科学でここまで分かっているのか!」 という事実に驚かされることの連続で、こちらも大変興味深く読めました。

> ブログの方では書籍のご紹介、余り無いようですね。

 ブログ開設当初は、駄文ながら時々読後の感想文のようなものを書いたりもしておりました。一冊の本の感想を書くためには、やはり、まず本自体をきちんと読み込むことが必要ですし、書くに際しても、そこそこの長さの文章が必要になります。最近はめっきり長文を書く体力も気力も弱くなってきてしまい (歳のせい? ^^; )、すっかりご無沙汰が続いているような状況です。

投稿: ともしび洞 | 2009年12月13日 (日) 00時05分

ともしび洞さん、こんばんは。
再度のコメント、ありがとうございます。
本の紹介文、とってもわかりやすいです!
そういえば以前に『拉致対論』のことを書かれていましたね。興味があった本だけに「もうちょっと書いていて欲しい~」と思っていたのでした。

「長文を書く体力と気力」、ともしび洞さんには十分お有りのように見えます。
でも短くてもいいので、また気が向かれたらご紹介くださいね。

投稿: りん | 2009年12月13日 (日) 22時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/200019/32563104

この記事へのトラックバック一覧です: 『46年目の光』:

« 寄せ植え講習会 | トップページ | ご老人は雨に打たれながら »